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さときびです
2015年に住み込みで7泊8日働いたあとに急死した家事代行兼ヘルパーの女性に労働基準法が適用されないとした理由でで労災認定されなかった訴訟で東京地裁は2022年9月29日請求棄却の判決をしました。今回の件について少し書きたいと思います。
1日19時間勤務しているので長時間労働に該当しているように思います。しかし、労働基準法の適用を受けない【家事使用人】という定義があります。
労働基準法は、同居に親族のみを使用する事業、および、家事使用人には、適用がありません。
労働基準法116条2項
家事使用人とは、従事する家族の指揮命令のもとで家事一般に従事するひとを指します。
だれの指示のもとで仕事をしているかで労働者であるかどうかの判断がされます。家政婦紹介所や家事サービス代行会社などに雇用されて各家庭を回り家事を行う場合は、行った先の家庭のひとの指示を受けていないので家事使用人に該当しません。
今回の事例の場合は、東京都の訪問介護・家事代行サービスから利用者の家庭に派遣され、介護や家事に従事していましたが家事に関する雇用契約は派遣先の家庭との間で締結されており、家事部分に関しては労働基準法の適用除外とされました。そのため、今回の労働時間を認定する場合は介護業務のみの4時間半となりました。結果として過重労働ではないと判断だれました。
今回のヘルパーさんの死因に関してです。2015年5月20日から27日朝まで、家政婦と訪問介護ヘルパーとして認知症で寝たきりの要介護者の家庭に勤務。27日夜、私的に訪れたサウナにて倒れ、緊急搬送のすえ急性心筋梗塞で死去されています。
今回の事案に関しては労働基準法の【家事使用人】の部分の問題視もさることながらサウナでの死亡事故という点もあります。たれればの話になりますが1週間働きづめてサウナの環境下では普通は大丈夫であったとしても水分を取られるので好ましくはなかったのでないかと考えられる。この点を含めて因果関係を結びつけるのも難しいところではあります
依頼主がどこまで求めるかにより「家事代行」と「家政婦」に分類されます。
依頼主とスタッフの間に入るのが「家事代行」です。既にやるべきことが列記されていることだけをこなすので指揮命令は派遣会社に存在するので「労働者」になります。仕事の出来不出来に関しては本人にも注文が入りますが依頼主がお金を払うのは派遣会社なのでそちらにもクレームとして意見を言います。
依頼主とスタッフの直接契約が「家政婦」となります。この場合は直接、依頼主から指示命令が入るので「労働者」としては認められないことになります。
他社家事代行サービスなどを見ると1~3時間のタイムチャージが基本で家政婦に関しては住み込みなど長時間の契約存在します。(実際、この部分関しては家政婦紹介サービスとして紹介会社は一定の紹介料をもらうことに留まると考えらます。)
この点に関して両者にどのような説明をしていたかにより今後の判決にも影響を与えていくものと思います。
長時間労働をしていたという事実に変わりはないと思います。労働法に関しては契約書などの書面以上に実態判断を重視します。契約書を度外視した労働もあることは事実なので実態を見ます。
今回の事例の場合だと個人の家庭でのやり取りをどこまで忠実にメモや記録をとっていたかも明確にはわかりません。
労働基準法の家事使用人が除外される理由として各家庭の事情もあるので国が規制や監督が困難かつ適切ではないという理由から「法は家庭に入らず」の法格言からきているところもあります。現代社会のニーズとズレが生じているのも事実なので見直しをかける機会なのかも知れません。今回は死亡事故という点で表面化しましたが該当の家庭と良好な関係性を築いていた場合もあるので一概に脱法スキームということも少し拡大解釈かと思います。極論、24時間休憩なしで家事介護をしていた場合は脱法スキームと言えると思いますがまず、そのようなことは起こりえないと考えます。また違った問題にすり替わっていきます。
今回は労災認定の否認の事例を上げてみました。労働者性という問題を着目するとテレワークやフリーランスの働き方によっても過労死のリスクはあります。今回は「家事使用人」という視点でしたが、フリーランスにも労災保険や雇用保険の適用はないのでこの点を考慮したスキームなども横行することも考えられます。会社としては労働者として雇用するよりリスクヘッジされることはいうまでもないので。今回の控訴をするので今後の判決にも注視したいと思います。
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